学生によるゼミ活動紹介

こんにちは。マネジメント学科、郷ゼミ3年の古澤、牛村、高橋、橋本です。
私たちが所属する『郷ゼミ』では、「マーケティングとイノベーション」に関連した研究を通して「課題→仮説→検証」の一連の流れを身につけ、論理的に課題解決ができるようになることを目標としています。今回は授業内で行ったイノベーションの事例を1つ取り上げ、学生が調査したものをご紹介させていただきます。

そもそも『イノベーション』ってなに?

【イノベーション】
イノベーションとは「個人あるいは他の採用単位によって新しいと知覚されたアイデア、習慣、または対象である」(ロジャーズ, 2018)です。
つまり、社会に今までなかった新しいもの・サービスのことです!

そして、もうひとつイノベーションを学ぶ上で重要なキーワードが「採用者」です。

【採用者診断】いきなりですが、ここで問題です!
Q.あなたは友人と3人で電気屋さんに行きました。目の前に見たことのない電子機器があります。
1回500円で試すことができます。皆さんはどうしますか?
①すぐにでも試してみる!
②最初に使用した友人の様子を見てから試してみる
③友人2人が使用した様子を見てから試してみる
④友人2人が使用した様子を見る&店員さんに聞いてから試してみる
⑤試さない

皆さんはどれを選びましたか?
この質問からわかることは、あなたがどの『採用者カテゴリー』に属するかということです!

【解説】
 ①すぐにでも試してみる!→イノベータ(2.2%)
…あなたはかなり『冒険的な』人!好奇心旺盛でなんでも挑戦してみたいと思う。
 ②最初に使用した友人の様子を見てから試してみる→初期採用者(13.5%)
…あなたは、『ブラッシュアップ』(磨きをかけること)が得意な人!今あるものを最大限に活用することができる。
 ③友人2人が使用した様子を見てから試してみる→初期多数派(34%)
…あなたは『慎重派』の人!ある程度確証を持って物事に取り組みたいと考えている。
 ④友人2人が使用した様子を見る&店員さんに聞いてから試してみる→後期多数派(34%)
…あなたはかなり『疑い深い』人!動くよりもまずは頭を使って考えることを重要としている。
 ⑤試さない→ラガード(10%)
…あなたは『安定志向』を求める人!新しいものに挑戦するよりは、今あることを続ける方が好き。

診断結果はあたっていましたか?
ぜひこちらの診断結果を参考に以下の説明を読んでみてください!

【採用者カテゴリー】
『採用者」はイノベーションの採用時期により革新性に基づいて次の5つのカテゴリーに分類することができます。
※革新性…新しいアイデアを相対的に早期に採用する度合いのこと

①イノベータ
☆タイプ:冒険的(大胆で危険を引き受ける!)
・新しいアイデアへの関心が高いため、イノベータは地域内の仲間のネットワークから離れて、コスモポライト(社会システムの外部の人々と接触が多い性格の傾向)は社会的関係を求める
・複雑的な技術的知識を理解し、活用する能力が必要

②初期採用者
☆タイプ:尊敬の対象(同僚から尊敬されていて、新しいアイデアを上手に利用!)
・ローカルライト(⇔コスモポライト)
・潜在的な採用者は、イノベーションについての助言や情報を初期採用者から入手しようとする
・革新性において平均的な人たちと比べて先進的ではない

③初期多数派
☆タイプ:慎重派(格言「新しいものを試す最初の人間になるな、そして古いものを捨てる際最後の人間になるな」)
・社会システムの成員の半数が採用する以前にイノベーションを採用
・初期の採用者と遅い採用者の中間という独自の立ち位置の為、普及過程でのつなぎ役という重要な役割

④後期多数派
☆タイプ:懐疑派(常に疑い、確実性を求める!)
・社会システムの成員の半数が採用した後に後期多数派が採用
・初期多数派と同様、社会システムの成員の3分の1を占める
・懐疑的かつ警戒の念を持ちながらイノベーションに接近するため、成員のほとんどが採用するまで採用しようとしない

⑤ラガード
☆タイプ:因習派(古くからの習慣やしきたりに従う)
・イノベーションを最後に採用する人
・決定過程じゃ長期に及び、新しいアイデアに気づいてからかなり経って採用ないし使用を始める

〇これらは、時間の経過とともに①→⑤へ変化していき採用者も増加していきます。よって普及率も高くなると言えます。

皆さんはどのタイプでしたか?
私は、新しいものは試したい気持ちは強いですが、一番最初に利用するのは少し不安に思うことが多いので「初期採用者」だと感じました。

ここからは私たちが行った研究の一例をご紹介します!
【研究課題『Fujikoのイノベーションにおける採用者の傾向調査』】
(アットコスメのクチコミから調査しました!)

Fujikoとは?
Fujikoは『メイクがキレイを魅せてくれるのは当然のこと。そこに驚きや感動というエッセンスを加えながらリアルな日常をきちんと見つめたアイテムを提案していきたい』(Fujiko公式HP)を理念に眉ティントやリップなどのコスメの販売を展開しているブランドです。

研究の視点

みなさんは、Fujikoのニュアンスラップティントをご存知ですか?
「『落ちない』が前提のウォーターティント処方ルージュ。ウォーターティントでマスクにつきにくく、ツヤも発色もうるおいうるおいも、膨らみさえも同時に唇にラッピング(Fujiko公式HP)」というように、話題になったリップティントで、発売2日で6.9万個も売り上げました!実は、Fujikoのニュアンスラップティントがどのように普及(売れていったか)を調べたところ3つのイノベーションの採用時期があることがわかりました。

時期① 発売当初(2021年2月~2021年3月)
Fujikoからニュアンスラップティントが発売
時期② 雑誌VOCE発売後(2022年7月~2022年8月)
その後、田中みな実さん×中野明海さんの豪華タイアップ限定カラーのミニサイズリップが雑誌VOCEの付録になりました。
即完売し、電話やメールで商品化してほしいとのラブコールがブランドに寄せられたそうです。
→それらの声を受けて製品化(期間限定2023年月5)
時期③ ②を受けて限定製品化後(2023年5月16日~2023年5月21日)
雑誌VOCE発売後、TIRTIRやロムアンドなど、ミニサイズを展開しています。

→3つのイノベーションの採用時期のそれぞれで消費者の採用理由は一緒か疑問に思い、私たちはそれぞれの3つのイノベーションの採用時期でどんな知覚価値(魅力に思う価値)で採用されているのかを明らかにすることにしました。

調査を行うにあたって、仮説を立てていこう!
書籍やコスメのクチコミサイト(アットコスメ)や当時の時代背景が記してある記事を参考に調査結果を予想していきます。そこで私たちが立てた仮説は以下です。

【仮説】
H1 時期① 発売当初の採用には「話題性」が影響する
H2 時期② 雑誌(VOCE)発売後の採用には「雑誌の付加価値(付録)」が影響する
H3 時期③ 限定製品化後の採用には「雑誌の反響」が影響する

@コスメのクチコミで仮説を検証します

上記の仮説を検証するために@コスメサイトのクチコミを①発売当初(2021年2月~2021年3月)50件、②雑誌(VOCE)発売後(2022年7月~2022年8月)50件、③限定製品化後(2023年5月16日~2023年5月21日)50件に分けてデータを集め要素に分けてクチコミを読み解く探索的な調査を行いました。
その結果、3つの時期で購入場所も公式通販からバラエティショップと移行しており、購入動機もそもそものファンだからという理由から話題を機に気になるようになるように変化していることがわかりました(詳細は図表1の通り

また、クチコミの評価を見ると①発売当初は初めて手に取る人が多いため評価は分かれていますが、③限定製品化後までいくと、クチコミやミニサイズの利用で良いと分かっている人が買っているため、☆の数が5~7の人が多くなったのではないかと考えられました(図表2)。

図表1 採用者への影響要因のまとめ(@コスメサイトのクチコミから)クリックで表示

図表2   製品の評価(☆の数)(@コスメサイトのクチコミ評価から)クリックで表示

調査結果からどんなことが言えるのか考察していこう!

改めて、今回は3つのイノベーションの(採用)時期にどんな知覚価値(魅力に思う価値)があるのかを明らかにすることを課題とし、@コスメのクチコミの時期を区切って分析することでそれぞれの時期でどんな理由で採用されていたのかを分析しました。その結果、明らかになったことをまとめます。

H1 イノベーション時期① 発売当初の採用には「話題性」が影響する
→話題性の影響を少なからずあったものの、雑誌発売前の初期採用者はFujikoブランド自体のファンであるという傾向があるとわかりました。つまり知覚価値としては「ブランドのファンとして買いたい」と考えられます。

H2 イノベーション時期② 雑誌(VOCE)発売後の採用には「雑誌の付加価値(付録)」が影響する
→影響を受けつつ、その波(ミニサイズ付録雑誌の供給量が足らなかったことが理由)にその当時は乗れなかった人が商品化を機に手に取ってみたという人が多い傾向がありました。つまり知覚価値としては「好きなインフルエンサーのファンとして書いたい&新しいものを手軽に試したい」と考えられます。

H3 イノベーション時期③ 限定製品化後の採用には「雑誌の反響」が影響する
→影響を受けつつ、その波(ミニサイズ付録雑誌の供給量が足らなかったことが理由)にその当時は乗れなかった人が商品化を機に手に取ってみたという人が多い傾向がありました。つまり知覚価値としては「お試し商品を経て製品購入したい」と考えられます。

最後に提言です!
最後にこの調査からどんなことが考えられるのか提言をしたいと思います。
「ミニサイズから販売することで初期採用のハードルを下げ」さらに「田中みな実さんの起用によって販売意欲を促進した」という今回の事例から、最初の採用者のハードルを下げるには、ターゲット層からの指示が大きいインフルエンサーを活用すること後半採用者のハードルを下げるためには、雑誌の付録や試供品の配布などで手軽にトレンドを把握できることが重要だと考えます。
これらが揃うことで、消費者の期待水準と知覚品質の一致が促され消費者満足に繋がと考えます。

さて、いかがだったでしょうか。イノベーションについてご理解いただけましたら幸いです!
日々変化を続ける社会であるからこそ、新しいものは常に生み出されていきます。
普段目を向けない部分にも注目して見ると、新たな発見があるかもしれせんね!
次回もお楽しみに^_^


参考文献

・エベレット・ロジャーズ 著 ; 三藤利雄 訳(2018)『イノベーションの普及』, 翔泳社.
・fujiko HP(https://fujikobrand.com/)
・@コスメ(アットコスメ)『フジコニュアンスラップティント』のクチコミ
https://www.cosme.net/products/10203505/review/